狭小幅"500mm"への挑戦
複数工程を狭小スペースで実現した方法とは
電子部品メーカーK社 生産技術部
材料費や人件費の高騰などにより、海外の工場を閉鎖し、国内に生産の拠点を戻す企業が増えています。
K社も一部の生産機能を既存の国内の狭い工場に移すことが決まっていました。
課題
課題のポイント
- わずか幅500mmのスペースに装置を追加しなければいけない
- 製品ライフサイクルが短いため、設置するラインはフレキシブル性が必要
中国工場の生産機能の移行先は、元々スペースの狭い国内工場
海外拠点での生産コストが上がりつづけ、K社は中国にある一部工場の閉鎖を決めました。この工場の生産機能は、国内にある複数の拠点に分散させることが決まっていました。
S氏の所属する部門でも、複数の工程を受け入れる計画がありました。
「私のチームでは、正直なところ『これ以上の増設が難しいのでは・・・』という意見が挙がっていました」とS氏は言います。
現状のラインを活かしつつ、中国での生産機能を移すためには、工程を組み換える必要がありました。しかし、既存施設では明らかにスペースに限界があったのです。何度設計図を敷き直してみても、確保できるスペースは幅500mm強が限界だったのです。
製品ライフサイクルに合った、フレキシブルなライン設計が望ましいが・・・
また、もう一つの課題は、定期的に行うラインの設計変更でした。製造する製品によっては、ライフサイクルが短く、短期間に設計変更が必要となります。そのため、装置の改造が容易に出来る、という条件が壁となっていたのです。
「パラレルリンクの導入も検討していましたが・・・ロボット本体に加え、ロボットを天井から吊るための強固な架台が必要です。しかし、どの程度の架台を用意すべきかわかりません」(S氏)
過去には、架台の剛性不足による振動が問題となり、架台を注文し直した苦い経験が引っかかっていました。架台によってコストの幅があるため、トータルコストの見当がつかない、という点も懸念していました。
解決
解決のポイント
- 天吊構造の全方位タイプスカラロボットは、限られたスペースへの設置が可能
- 稼動範囲が広いので、装置の改造にもフレキシブルに対応できる
諦めていた隙間に設置!"稼動範囲が広い天吊構造ロボット"が最適解だった
S氏は、ロボットメーカー数社から話を聞くことにしました。その中の1社だったヤマハ発動機からの提案は、非常に興味深いものでした。
ヤマハ発動機からの提案は、全方位タイプのスカラロボット・YK350TWで構成してはどうか、という内容でした。「YK350TW」は、天吊構造のため設置スペースが不要で、幅500mmのスペースがあれば設置可能です。本体真下のスペースを有効活用でき、レイアウトの自由度が高い製品ですよ」と説明を受けたS氏たちは、限られたスペース内での設置には適しているだろうと直感したといいいます。
「担当の営業さんに動画を見せていただいたのですが、無駄のない動きには驚きました」(S氏)
架台の不安はゼロ。レイアウトの自由度も高く、長く使い続けられる設備に
とはいえ、社内から「天吊ですか?」という声が上がることは容易に想像がつきました。しかし、ヤマハ発動機はオプションで架台もメニューとして持っていたため、架台の強度の判断も全て任せて依頼することができる、ということでした。これであれば、イニシャルのコストも最低限に抑えて導入できる、ということもあり、K社はテスト導入として1ラインに設置を決めました。
全方位タイプのスカラロボットを選択したことにより、コンパクトなライン設計を実現したK社。計画通りにラインの増設をすることができた今回の手法は、他拠点へも広がっているといいます。
「うちと同じように頭を抱えていた他の拠点担当者も見学に来ました。みんな、『その手があったか』というリアクションでしたね」(S氏)
レイアウトの自由度が高いため、装置を改造する際にもスムーズに対応ができ、将来的にも長く使っていけそうだという点も評価のポイントとなっているそうです。
S氏は、「今回のことで、プロに相談することの重要性を身にしみて感じました。カタログのスペックだけでは、どんなことができるとはわからないですし。今後も色々と相談していきたいと思います」と語ってくれました。